2016年6月19日 (日)

第365回:主要政党の2016年参院選公約案比較(知財政策・情報・表現規制関連)

 6月22日公示、7月10日投開票予定の参院選が近づく中、主要政党の選挙向け公約案が以下の通り大体出そろった。

 今回も各党とも内容はかなり薄いのだが、TPP問題を中心に関連事項を抜き出すと以下のようになる。

<自民党>
◯農業など守るべきものは守りつつ、TPPの活用などにより近隣アジアの海外市場をわが国の経済市場に取り込みます。

◯世界最速・最高品質の審査体制の実現や地方創生と中小企業のための知財活用の促進、デジタル時代における著作権制度の整備、知財教育の充実・人材育成、官民協調による国際標準の獲得や認証基盤の整備等の知的財産・標準化戦略を推進し、世界最高の知財立国を目指します。

◯「衣」「食」「住」やコンテンツ(アニメ、ドラマ、音楽、映画等)をはじめ「日本の魅力」の海外発信を進めるクールジャパンを成長戦略の一翼と位置付け、支援策、人材の育成、国内のクールジャパン拠点構築等の振興策を積極的に展開します。

<公明党>
◯アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP構想の実現も視野に、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の早期発効、日中韓自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉に取り組むとともに、日EU経済連携協定(EPA)など貿易ルールづくりを積極的に進めます。また、投資協定等の締結を進め、ODAを活用しつつ、海外でのビジネス環境を改善します。また、G7諸国等と協調しながら為替の安定に努めます。

<おおさか維新の会>
◯TPPに賛成。将来は、アジア太平洋自由貿易圏の実現を目指す

<民進党>
◯今回のTPP合意に反対します
 国会審議を通じて、①農産物重要5項目の聖域が確保されていない、②自動車分野でのメリットも小さい、③このような交渉結果となった経緯・理由に関する情報が明らかになっていない、ことがはっきりしました。そのことから、今回のTPP合意については反対します。

<生活の党>
◯TPPは反対。各国とのFTA(自由貿易協定)等を推進します。

<社民党>
◯特定秘密保護法を即時廃止します。「共謀罪」の新設に反対します。

◯言論や報道の自由を侵害するメディア規制の動きに反対します。

◯農林水産業と地域を破壊し、国民の食の安全を脅かすTPP(環太平洋経済連携協定)参加に断固反対します。「農産物重要5項目」の関税維持を求めた国会決議に違反するTPP協定案の国会での承認を阻止します。全ての交渉経過記録の公開を強く求めます。

<共産党>
◯TPP協定に断固反対、農林水産業、中小企業の振興にとりくみます
(略)

◯言論・表現の自由を守ります。ヘイトスピーチを根絶します
 安倍政権による放送の自由、言論の自由への権力的介入は重大です。高市早苗総務相が、放送内容を「政治的不公平」と判断した場合は放送局の電波を停止できると発言し、それを内閣があげて擁護しているのは大問題です。
 ――放送・報道への政府による権力的な介入に断固反対します。
 ――行政による「政治的公平」を口実にした市民の言論・表現活動や集会への不当な介入を許しません。
 ――秘密保護法を廃止します。
 ――民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶します。超党派で成立させた「ヘイトスピーチ解消法」も活用して、政府が断固たる立場にたつことを求めます。

(各分野の政策より)
17、TPP――国会決議違反、食・農・地域経済への打撃、ISD条項、食料主権
(略)
安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――TPP交渉で、「知的財産」の章で、医薬品の知的財産権の保護を強化する制度がアメリカと発展途上国の対立点となり、アメリカはバイオ薬品(抗がん剤や新薬のC型肝炎の治療薬など)の特許期間13年を要求、5年にすべきという発展途上国と対立しました。その結果、特許期間は、少なくても8年又は5年+他の措置とされました。あわせて、①特許期間の延長、②特許が切れたバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、③ジェネリック薬(後発医薬品)承認決定に特許権者に特許権を侵害していないかを確認するリンケージ制度を設けています。

 これら規定は、ジェネリック薬品の市場への参入を長期化させることになり、日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が手に入りにくくなる状況は改善されません。しかも、参加国の政府が薬価決定する際に、「直接影響をうける申請者」が、不服審査を開始することができることが規定されており、今後、アメリカの製薬企業などが利害関係者として、医薬品・医療機器の保険扱いの可否や公定価格の決定に影響力を強めることが懸念されます。

37、文化――助成制度、文化施設、専門家の権利・地位向上、知的財産権
(略)
著作者の権利を守り発展させます

 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。著作権は、表現の自由を守りながら、著作物の創造や実演に携わる人々を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品の二次利用への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。

 私的録音録画補償金制度は、デジタル録音録画の普及にともない、一部の大企業が協力義務を放棄したことによって、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益をまもるために、私的複製に供される複製機器・機材を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担をもとめる、新たな補償制度の導入をめざします。

TPP協定の承認に反対します

 TPP協定で、著作権の分野では、「保護期間の延長」「非親告罪化」「法定賠償金制度」「アクセスコントロールの回避等」についての措置、「配信音源の2次使用料請求権の付与」があらたに持ち込まれ、著作権法の改正が議論されようとしています。現状では、アーカイブの整備、孤児著作物の増加問題などに手が打たれておらず、またアメリカ型の訴訟・裁判制度の持ち込みに懸念の声も広がっています。専門家や関係団体などの間でも意見が分かれている問題を、外圧をてこに強行するのはゆるされません。TPP協定と関連法案の撤回を求めます。
(略)

憲法を生かし、表現の自由を守ります

 芸術活動は自由であってこそ発展します。憲法は「表現の自由」を保障しています。ところが、第2次安倍内閣の発足以降、各地の美術館や図書館、公民館など公の施設で、創作物の発表を不当な理由で拒否するなど、表現の自由への侵害が相次いでいます。安倍首相のもとに開催される「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」のように、特定の価値観を創造活動に押しつける動きもあり、創作活動の委縮も懸念されます。安倍政権による放送の自由、言論の自由への権力的介入もきわめて重大です。憲法の基本的人権の条項をまもり生かして、表現の自由を侵す動きに反対します。「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。

 諸外国では、表現の自由を守るという配慮から、財政的な責任は国がもちつつ、専門家が中心となった独立した機関が助成を行っています。文化庁の助成は応募要綱などが行政の裁量で決められ、芸術団体の意見がそこに十分反映されていません。すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善します。
(略)

 自民党が知財政策について一応触れているが、これは今年の知財計画に書かれているキャッチフレーズをそのままなぞっているだけでほとんど意味はない。中では、これもいつも通りだが、共産党がTPPとの関係で知財の保護強化を問題視しているのはポイントが高い。また、例によって政党として表現の自由の問題を明確に取り上げているのは社民党と共産党である。

 今回の選挙も残念ながら知財問題が大きな争点になることはないだろうが、今までさんざん書いて来ている通り、TPP協定の批准が有害無益な知財保護の強化に直結するのは間違いない。参考に各党の公約からTPP協定に関する賛成反対だけを一覧でまとめると、

<自民>:賛成
<公明>:賛成
<お維>:賛成
<民進>:反対
<生活>:反対
<社民>:反対
<共産>:反対

となり、与野党対立の構図はさらに分かりやすくなった。今回の選挙でも私はTPP協定反対の面から投票先を決めるつもりである。

 また、加えて特に気をつけておきたいのは前回と同じく自民党の公約案が憲法改正を含んでいることである。自民党の実質的に表現の自由などの基本的人権の制約・国民からの剥奪を狙っているゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)の危険性はいくら強調してもしすぎではない。同じく憲法改正を唱えるおおさか維新の会への投票もかなり危険と思っておくべきだろう。

 なお、前回の参院選では規制強化慎重反対派元国会議員候補リストもつけたのだが、今回は4野党の候補者調整によってほとんどの選挙区で与党か野党かという二者択一の選択になり、個人に対する投票という意味は薄れそうなのでこのリストは省略する。(リストについて興味のある方は、第293回に載せた2013年参院選向けに作ったものや番外その25に載せた2010年参院選向けに作ったものを参照頂きたい。)

(2016年6月26日夜の追記:特に内容に変更はないが、各政党から詳細版を含む正式な公約集が公開されているので、念のため<こころ>と<改革>も合わせ、ここにそのリンクを張っておく。

 なお、新党改革はTPP協定に賛成と見えるが、その公約に「コミケ、二次創作、コスプレ、同人誌など様々な表現を許容し、表現の自由を守ります」という表現規制問題の面から見て非常にポイントが高い記載が入っているのは山田太郎候補の働きかけによるものだろう。)

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