2018年12月10日 (月)

第401回:ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制(リンク規制)の法制化を含む文化庁・著作権分科会・法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見募集の開始(2019年1月6日〆切)

 最後の12月7日の文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会の資料がまだ文化庁のHPにアップされていないが、先日から報道されている通り、文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめが2019年1月6日〆切でパブコメにかかった。(電子政府のHP、文化庁のHP参照。)

 文化庁の今回の中間まとめはダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制(リンク規制)の法制化を含むものであって、インターネットにおける情報・表現の自由に非常に大きな影響を及ぼす可能性のあるものであり、ここでも、その内容を見て行きたいと思う。

 この中間まとめ(pdf)の章立ては、「第1章 リーチサイト等を通じた侵害コンテツへの誘導行為への対応」、「第2章 ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」、「第3章 アクセスコントロール等に関する保護の強化」、「第4章 著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化」、「第5章 著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入」、「第6章 行政手続に係る権利制限規定の見直し(地理的表示法・種苗法関係)」、「第7章 その他(改正著作権法第47条51項3号規定に基づく政令ニーズ)」となっており、第7章を除いてそれぞれ全て法改正事項として書かれており、以下で順に取り上げて行くが、中でも「リーチサイト等を通じた侵害コンテツへの誘導行為対応」、「ダウンロード違法化の対象範囲見直し」は問題が大きく、「アクセスコントロール等に関する保護の強化」はそれに次ぐと言っていいだろう。(なお、これらは意見募集要領(pdf)ではA~Gの区分とされている。)

(1)リーチサイト規制(リンク規制)の法制化
 まず第1章のリーチサイト等を通じた侵害コンテツへの誘導行為への対応は第2ページから始まるが、権利者団体のリーチサイトについてどこまで現行法による対応を真剣に試みたのか不明な規制強化ありきの主張と、消費者団体等のリンク規制には慎重であるべきとする主張が両論併記の形で並べられた後、第22ページからの検討結果から、リーチサイト規制(リンク規制)の法改正のポイントとなるだろう部分を抜き出して行くと以下のようになる。

(1)民事(差止請求について)(第22ページ~)
ア.総論(略)

イ.場・手段について:「差止請求の対象とするべき『場・手段』は,社会通念上いわゆる『リーチサイト』・『リーチアプリ』として認知されているような,類型的に侵害コンテンツの拡散を助長する蓋然性が高い悪質なものに限定することが適当」(第24ページ)

ウ.主観について:「侵害コンテンツであることへの認識に関し一定の主観要件を課すことが適当」、「具体的には,『違法にアップロードされた著作物と知っている場合,又はそう知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合』等として,侵害コンテンツであることについて故意・過失が認められる場合に限定することが適当」(第24ページ)

エ.行為について:「実質的に侵害コンテンツへの到達を容易に行えるようにする情報の提供等と評価できる行為であれば,これを差止請求の対象とすること(が)適当」(第26ページ等)

オ.対象著作物について
ⅰ 有償著作物等への限定を行うべきか否かについて:「限定を行わないこととするのが適当」(第27ページ)
ⅱ いわゆるデッドコピー等への限定を行うべきか否かについて:「オリジナルの著作物の相当部分をそのまま利用しているようなケースについては差止めの対象とするべきという考え方を基本としつつ,具体的な制度設計に当たっては,差し当たり緊急に対応する必要性の高い悪質な行為類型への対応という今般の制度整備の考え方,対象範囲を限定することによる潜脱のおそれ,対象範囲の限定の仕方が明確でない場合には萎縮効果を生じるおそれがあること,立法技術上の対応可能性なども踏まえ,どのような形で対象を規定するのが妥当かについて検討が行われることが適当」(第29ページ)
ⅲ 国外における侵害コンテンツの取扱い:「国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものに係るリンク情報等についても差止請求の対象とすることが適当」(第29ページ)

カ.その他の要素(正当な目的を有する場合の取扱い等)について:「具体的な制度設計に当たり,場・手段に関する要件の設定の仕方も念頭において,そうした場等において行われる侵害コンテンツへのリンク情報等の提供をする行為のうち差止めの対象外とするべきケースとしてどのようなものがあるかを検討した上で,場・手段の要件の内容も踏まえて特別な除外規定の要否の判断が行われることが適当」(第30ページ)

キ.リーチサイト運営者に対する差止請求について
ⅰ 個々の著作物に係るリンク情報等の提供行為に関する差止請求について:「リーチサイト運営者の個々のリンク情報等に関する責任についての立法的な対応の当否については,以上の点を勘案して検討が行われる必要がある」(第31ページ)
ⅱ リーチサイト運営行為そのものに関する差止請求について:「サイト運営の差止めを請求する権利を個々の権利者に付与することは過剰差止めとなるおそれがあること,及びサイトの中に含まれる適法な情報との関係でも過剰差止めの問題が生じることから,慎重な検討が必要」(第32ページ)

(2)刑事について(第32ページ~)
ア.新たな罰則を設ける必要性について(略)

イ.具体的な制度設計について
ⅰ リーチサイト・リーチアプリ等におけるリンク情報の提供行為に係る罰則:「みなし侵害になるようなリーチサイト等の侵害コンテンツを拡散する蓋然性の高い場等において侵害コンテンツのリンク情報等を提供する行為は,悪質性が強いと認められ,抑止効果が生じるようにすることが適当」(第33ページ)
ⅱ リーチサイト運営・リーチアプリ提供行為に係る罰則:「リーチサイトやリーチアプリといった,侵害コンテンツへの到達を容易にすることによって侵害コンテンツを拡散する蓋然性の高い場の運営や手段の提供を行うことは,個々のリンク情報等の提供を行う者との比較において,違法行為を助長する度合いがより大きく,社会総体として見たときに著作権者により深刻な不利益を及ぼしていると評価できることから,個々の著作物等に係るリンク情報等の提供行為とは独立して,社会的な法益侵害を及ぼすものとして,罰則の対象とするべき」(第33ページ)
ⅲ 法定刑について:「現行著作権法における罰則の法定刑の考え方との整合性に留意しつつ,今般創設する各罰則の法益侵害の度合いに照らして適切な法定刑が検討されることが適当」(第34ページ)

 第35ページ以降の「インターネット情報検索サービスへの対応について」で、「現時点において直ちに立法的対応の検討を進めることはせずに,まずは当事者間の取組みの状況を見守ることとし,協議が一定程度進捗した段階で進捗状況等の報告を受け,必要に応じ対応を検討していくことが適当」(第42ページ)とされているので、検索エンジンについて特別な法改正がされることはなく、また、「最初の対応に当たっての基本的な考え方」で「海賊版蔵置サイトやリーチサイトのような場以外の場(例えば個人が一般的な言論活動を行うことを目的として開設しているSNSのアカウント等)において行われる表現の中に侵害コンテンツのリンク情報が単発的に含まれているようなケースについては,(ゲーム関係者から要望のあった汎用的なUGCサイトにおける事案も含め)その被害実態が必ずしも明らかではない。したがって,正当な表現行為の萎縮が生じないよう,こうした場における表現行為は今般の法的措置の対象とはしないこととし,当該行為に対する差止請求の可否については,引き続き現行法の解釈・運用に委ねることとすることが適当」(第23ページ)と書かれていることにも注意しておくべきだろうが、上で抜き出した部分をまとめると、良く分からない部分も多いものの、文化庁がリーチサイト規制(リンク規制)として考えている法改正は、著作権法第113条のみなし侵害規定の項の一つとして以下のようなものを追加し、合わせて刑事罰も付加しようとするものではないかと思える。(いつものことだが、報告書だけで具体的な条文案をつけない役所のやり方は卑怯という他なく、以下はあくまでダウンロード違法化や検索エンジンの例外などの条文から私が類推したものである。)

著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)に係る送信元識別符号(注:リンク情報)等を、その事実を知りながら又はそう知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合に、その著作権の侵害を助長する蓋然性が高い方法により、提供する行為は、それらの著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

 このようなリーチサイト規制(リンク規制)の法制化は一応それらしく限定されているようにも読めるが、ここでの最大の問題点は、この文化庁の検討が生煮えもいいところであって、本来先に検討するべき現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理を投げ捨てて、みなし侵害規定の追加ありきで法制化を考えている点である。本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、立法による対処も当然あり得るだろうが、本当にどのような場合について現行法では不十分なのか残念ながら報告書を読んでも良く分からず、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、このような生煮えの検討に基づくみなし侵害規定の追加は、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性が増すだけと私には思える。

(2)ダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大
 そのインターネット上の海賊版対策に関する検討会議が頓挫したことから、知財本部が急いで文化庁にねじ込んだためだろうが、次の第43ページからの第2章ダウンロード違法化の対象範囲の見直しとなるとさらに生煮えの感が高まる。

 この点について他の国の状況が何ら参考にならないことはここで繰り返し書いて来ており、日本でも現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化について海賊版対策として何ら効果が上がっていないことは明白だと思うが、文化庁はこの報告書で取ってつけた様に各国でダウンロード違法化がされており、効果が上がっているような印象操作を書いて、第66ページで「録音・録画と同様の要件の下,対象範囲を著作物全般に拡大していくことについては相当程度の合理性が認められる」、第67ページで「対象範囲の拡大に当たっても,抑止効果を確保する観点から,同様に,有償で提供・提示されたものに限って刑事罰を科すことが適当」と、結論ありきでダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大を正当化しているのである。

 第66ページには、「具体的な対象範囲の在り方としては,録音・録画と同様の要件の下,対象範囲を著作物全般に拡大していくことを基本としつつ,並行してパブリックコメント等を通じて,事務局において引き続きユーザー保護が必要となる事例の有無について更なる検証を進めることが適当である。仮に,その中で,ユーザー保護の必要性・正当性が明らかな事例等が確認された場合には,それに即して,上記(4)で示した選択肢も参考に,悪影響が生じない形での限定方法を検討の上,立法措置に反映させることが適当であると考えられる」と、あたかもパブリックコメントで集めた意見を取り上げるかのような記載もあるが、拡大の結論ありきで報告書が書かれ、ほとんど大した根拠もなく「対象範囲を著作物全般に拡大していくことを基本」とすると決めつけているところで、広く集めた意見を本当にきちんと取り上げる気があるのか甚だ疑わしい。

(ダウンロード犯罪化の拡大については、TPP11関連法で導入される一部非親告罪化との関係も問題となるが、第68ページの「ダウンロード違法化に係る刑事罰については,全て親告罪のまま維持することが適当」ということはあまりにも当然の事でしかない。)

 このダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大について、また昔のように大量のパブコメが提出される事を恐れてか、文化庁らしくもなく、「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する留意事項(pdf)という参考資料がついており、「パブリックコメントに意見を提出いただく前に、必ず御一読ください」という文章とともに、「ダウンロード違法化に関して(中略)ダウンロード型の海賊版サイト等も多数存在しており、それらのサイトによる被害の拡大を防止するための措置として一定の効果が見込めるもの」だとか、「ダウンロード違法化についても(中略:海賊版対策の)手法の一つとして有効かつ重要なもの」だとか、「単に視聴・閲覧する行為は違法となりません」だとか、「視聴・閲覧に伴うキャッシュやプログレッシブダウンロードについても、著作権法第47条の8(平成30年改正後は第47条の4第1項)により適法となります」だとか、「特定少数者間でのメール送信や、個人が使用するクラウドロッカーからの送信等は含まれません」だとか、「ウェブサイトに掲載されたテキスト・画像をプリントアウトする行為や、そこでプリントアウトされたものを更にPDF化してコンピュータに保存する行為は違法とはなりません」だとか、「『複製』とは、手段を問わず著作物を有形的に再製することを指すものですので、右クリックによる保存のほか、スクリーンショット等も対象に含まれます」だとか、「『違法か適法か判断がつかなかった』、『通常であれば、違法だと当然に知っているべき状況だったが、本人は知らなかった』等の場合には、違法となりません」だとか、くどくど書いているが、私はこんなところで誤解などしていないし、今まで文化庁関連のパブコメの結果は十年以上見て来ているが、昔も今も全くないとまでは言わないが、このような基本的なところで誤解して出されている意見はそこまで多く見かけるものではない。

(3)アクセスコントロール等に関する保護の強化
 上の2つに比べると、法改正としては小さい話だが、第70ページからの第3章アクセスコントロール等に関する保護の強化も問題がある。

 細かな条文に関する話は省略するが、ここで書かれているのは、以下の通り、要するに不正競争防止法の技術的制限手段の規制と著作権法の技術的利用制限手段(元は技術的保護手段)を合わせようとするものである。

・「著作権法においても,定義規定の文言上の疑義により近時のソフトウェアの不正使用の態様に適切な対応ができない状況が生じるのは望ましくないと考えられることから,『技術的利用制限手段』の定義規定における『・・とともに』という文言を削除し,アクティベーション方式が含まれることを明確化することが適当」(第73ページ)

・「不正なシリアルコード(指令符号)の提供等は,回避装置・プログラムの提供等と同様に,多くのユーザーによる技術的利用制限手段の回避行為を助長する悪質な行為であり,正規のライセンス購入を減少させ,当該ソフトウェア等の著作権者の経済的利益を不当に害するものであることから,著作権法においても,著作権者の経済的利益の保護に万全を期す観点から,新たに規制対象とすることが適当」(第75ページ)

 既に不正競争防止法の改正が成立しているので、このような法改正の提案は予想されたこととはいえ、私は不正競争防止法やTPP11関連法によるDRM規制の強化にも反対であり、不正競争防止法と著作権法による二重保護の問題やDRM保護のそもそもの必要性についてなされるべき検討もせずに、このような2つの法律の条文の辻褄合わせのような改正には全く賛成できない。

(4)その他
 その他の話はマニアックでかつ特に大きな問題がある訳ではないので、ポイントの抜粋だけに留めるが、第81ページからの第4章著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化では、今年の不正競争防止法や特許法等の改正に合わせ、「『文書提出命令の申立ての対象書類等が侵害立証・損害額計算のために必要な書類であるか否かを判断する場合』にもインカメラ手続を用いることができるよう見直しを行うのが適当」(第85ページ)、「インカメラ手続に専門委員を関与させることができるよう見直しを行うのが適当」(第86ページ)とされ、第87ページからの第5章著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入では、ライセンスの対抗要件として登録を求めない「対抗要件を要することなく当然に対抗できることとする制度(当然対抗制度)を導入することが妥当」(第108ページ)(平成23年特許法改正に対応するもの)とされ、第135ページからの第6章行政手続に係る権利制限規定の見直し(地理的表示法・種苗法関係)では、「地理的表示法に基づく審査手続や種苗法に基づく審査手続・調査手続において,必要と認められる限度で行われる著作物の複製を権利制限の対象とすることが適当」(第144ページ)(特許庁での手続きについて平成18年著作権法改正で対応されていることから、それに続くもの)とされている。

 ざっと読んだだけだが、この文化庁の報告書に含まれているものの中でも、リーチサイト規制(リンク規制)の法制化とダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大の問題は非常に大きく、私は今回のパブコメも提出するつもりである。

(2018年12月12日夜の追記:幾つか誤記を直した。)

(2018年12月13日夜の追記:文化庁のHPにも中間まとめに対する意見募集の案内が掲載されていたので上でリンクを追加した。)

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