2015年4月19日 (日)

第335回:スペインの著作権法改正(スペイン版グーグル法)

 国内では4月14日に知財本部会合が開かれ、去年通りならじきに今年の知財計画向けのパブコメの募集があると思うが、この間に、書こうと思いながら今まで書いていなかった去年11月4日に成立したスペインの著作権法改正の話を取り上げておく。

 改正法が掲載されているスペイン政府の官報(スペイン語)に書かれている通り、この法改正は、スペイン著作権法(スペイン語)において、主に著作権及び著作隣接権に関する欧州指令第2011/77号や、孤児著作物に関する欧州指令第2012/28号に対応するとともに、第241回で取り上げた2010年10月の欧州司法裁の判決の後2011年11月の勅令(スペイン語)(pdf)で行われていた私的複製補償金の国家予算による支払いの著作権法への組み入れと、グーグルに対する補償金賦課と、ネット規制の強化を含み、合わせて著作権管理団体の運営の透明性を高めることを目指すというかなり盛りだくさんな内容のものである。

 この法改正の内容は孤児著作物と著作権管理団体の運営の透明化に関する部分以外およそロクでもものばかりである。全ての条文を見て行っても良いのだが、孤児著作物についてはドイツやフランスのように特殊なことをしておらず、私的複製補償金問題についてはelpais.comの記事1(スペイン語)に書かれている通り既にスペイン国内でこの法改正に対して憲法訴訟まで提起されている上欧州全体を巻き込んでさらにごたごたが続くのは間違いなく、ネット規制の強化はその実効性が不明であり、他国の著作権管理団体については余りにマニアックな話と思うので、ここでは、既にスペインでグーグルニュースが閉鎖されるという影響を引き起こしており、第295回で取り上げたドイツのグーグル法との比較において興味深いグーグルへの補償金賦課に関する部分を特に訳出する。

 このグーグルに補償金を賦課するために追加されたスペイン著作権法の第32条第2項は以下のようなものである。

Articulo 32. Citas y resenas e ilustracion con fines educativos o de investigacion cientifica.

2. La puesta a disposicion del publico por parte de prestadores de servicios electronicos de agregacion de contenidos de fragmentos no significativos de contenidos, divulgados en publicaciones periodicas o en sitios Web de actualizacion periodica y que tengan una finalidad informativa, de creacion de opinion publica o de entretenimiento, no requerira autorizacion, sin perjuicio del derecho del editor o, en su caso, de otros titulares de derechos a percibir una compensacion equitativa. Este derecho sera irrenunciable y se hara efectivo a traves de las entidades de gestion de los derechos de propiedad intelectual. En cualquier caso, la puesta a disposicion del publico por terceros de cualquier imagen, obra fotografica o mera fotografia divulgada en publicaciones periodicas o en sitios Web de actualizacion periodica estara sujeta a autorizacion.

Sin perjuicio de lo establecido en el parrafo anterior, la puesta a disposicion del publico por parte de prestadores de servicios que faciliten instrumentos de busqueda de palabras aisladas incluidas en los contenidos referidos en el parrafo anterior no estara sujeta a autorizacion ni compensacion equitativa siempre que tal puesta a disposicion del publico se produzca sin finalidad comercial propia y se realice estrictamente circunscrita a lo imprescindible para ofrecer resultados de busqueda en respuesta a consultas previamente formuladas por un usuario al buscador y siempre que la puesta a disposicion del publico incluya un enlace a la pagina de origen de los contenidos.

第32条 引用及び批評並びに教育又は科学研究目的の提示

第2項 情報提示、世論形成又は娯楽の目的で定期刊行物又は定期的に更新されるウェブサイトで公開された内容の重要でない断片の集合の電子サービス提供者による公衆送信可能化は、公正な補償を受けることによって、出版者又は場合により他の権利者の権利が損なわれることがない場合に、許諾なく行うことができる。この権利は放棄することはできず、知的財産権の管理団体を通じて行使される。どのような場合であれ、定期刊行物又は定期的に更新されるウェブサイトで公開されたどのような画像、写真の著作物又は単なる写真の仲介による公衆送信可能化でも許諾の対象となる。

 前段の規定にかかわらず、前段に記載された内容に含まれる個々の語の検索ツールを提供するサービス提供者による公衆送信可能化は、自身の商業的目的でなく、検索利用者によって前に作られる検索キーワードに応答して検索結果を提供するために厳密に必要な限りにおいて実現され、公衆送信可能化が内容の元のページへのリンクを含む場合、許諾の対象にも適正な補償の対象ともならない。

 この法改正の施行日である2015年1月1日より前の2014年12月にグーグルはそのスペイン版のグーグルニュースを閉鎖しており、以来今日に至るまでそれは使えない状態にある。

 2013年のドイツのグーグル法は、第295回で書いた通り、グーグルニュースから排除された出版社側がアクセス数の減少に早々に音を上げ、グーグルとの提携の形を改めるだけに終わり、ほとんど何の意味も持たなかったのであり、このようにドイツでグーグル法が失敗したことはスペインでも知られていただろうにもかかわらず、この法改正でスペイン政府あるいは議会がドイツの二の轍を全力で踏みに行ったのは全く理解に苦しむ。

 結果として多少根比べが続くにしても、このスペインの試みもやはり上手く行かないだろうと、ドイツ同様、ネットの特性を良く考えて作らない限り法改正は失敗することを示す悪例の1つとしかならないだろうと私は見ている。

(なお、上ではざっとしか書かなかったが、スペイン国内では2011年11月の勅令に対しても裁判が提起されており、2014年9月にスペイン最高裁から欧州司法裁へこの国家予算による補償金支払いが欧州指令に照らして妥当か否かの質問付託もされている(elpais.comの記事2(スペイン語)、スペイン裁判所のリリース(スペイン語)参照)。権利者団体が国家予算による補償金の支払いに対してここまで反対する理由は、表向き言っていることがどうあれ、国家予算からの支払いだと金額がどうしても減り、増額要求も難しいということに尽きる。本来きちんと根拠とともに私的複製による権利者への実害の量を示せれば支払われる金額は同じになるはずだが、実のところそんなものはないので、要するに国を相手にするより政治的に弱いメーカーや消費者から巻き上げた方が多く金が取れるということに過ぎない。恐らく主張している当の権利者団体の関係者たちは気づいていないのだろうが、このことだけからでも、如何に私的複製補償金の根拠がそもそもあやふやか分かろうというものだろう。しばらく時間がかかると思うが、私的複製補償金問題について、この裁判も含め、また欧州で何かしらの流れが見えて来たところでまとめて紹介したいと思っている。)

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