2017年11月11日 (土)

第384回:アメリカ抜きTPP大筋合意の凍結項目(知財関連)

 予想されたこととは言え、衆議院選挙では自民党が勝ち、これと言っていいニュースもない中、アメリカ抜きの11カ国でTPP協定が大筋合意が発表されたという報道があった。

 政府のTPP対策本部のHPで凍結項目が公表されているが、TPP11協定の合意内容について(pdf)という文書では、以下のものが知財関連の凍結項目としてあげられている。

〇知的財産の内国民待遇(18.8(脚注4の第3~4文))
〇特許対象事項(18.37.2、18.37.4の第2文)
〇審査遅延に基づく特許期間延長(18.46)
〇医薬承認審査に基づく特許期間延長(18.48)
〇一般医薬品データ保護(18.50)
〇生物製剤データ保護(18.51)
〇著作権等の保護期間(18.63)
〇技術的保護手段(18.68)
〇権利管理情報(18.69)
〇衛星・ケーブル信号の保護(18.79)
〇インターネット・サービス・プロバイダ(18.82、附属書18-E、附属書18-F)

 また、「附属書Ⅱ 停止(凍結)される規定のリスト」日本語仮訳(pdf)から同じく知財関連の凍結項目を抜き出すと、以下のようになる。

9. Patentable Subject Matter - Article 18.37.2 and 18.37.4 (Second Sentence)
9.特許を受けることができる対象事項 第18.37条2及び4(第2文)

10. Patent Term Adjustment for Unreasonable Granting Authority Delays - Article 18.46
10.特許を与える当局の不合理な遅延についての特許期間の調整 第18.46条

11. Patent Term Adjustment for Unreasonable Curtailment - Article 18.48
11.不合理な短縮についての特許期間の調整 第18.48条

12. Protection of Undisclosed Test or Other Data- Article 18.50
12.開示されていない試験データその他のデータの保護 第18.50条

13. Biologics - Article 18.51
13.生物製剤 第18.51条

14. Term of Protection for Copyright and Related Rights - Article 18.63
14.著作権及び関連する権利の保護期間 第18.63条

15. Technological Protection Measures (TPMs) - Article 18.68
15.技術的保護手段 第18.68条

16. Rights Management Information (RMI) - Article 18.69
16.権利管理情報 第18.69条

17. Protection of Encrypted Program-Carrying Satellite and Cable Signals - Article 18.79
17.衛星放送用及びケーブル放送用の暗号化された番組伝達信号の保護 第18.79条

18. Legal Remedies and Safe Harbours - Article 18.82 and Annexes 18-E and 18-F
18.法的な救済措置及び免責 第18.82条 附属書18-E,附属書18-F

 TPP協定のための法改正項目やその内容については第352回第360回などで書いているが、比較してみると、日本における法改正項目中で凍結されたのは、

  • 手続き遅延を理由とした特許の保護期間延長(TPP協定第18.46条、改正特許法第67条他)
  • 著作権保護期間の延長(TPP協定第18.63条、改正著作権法第51条他)
  • アクセスコントロール回避行為そのものの規制(TPP協定第18.68条、改正著作権法第2条他)

で、凍結されなかったのは、

  • 発明の新規性の喪失の例外期間(グレースピリオド)の延長(TPP協定第18.38条、改正特許法第30条)
  • 配信音源の2次利用に対する使用料請求権の付与(TPP協定第18.62条、改正著作権法、改正著作権法第95条)
  • 著作権侵害における法定賠償制度の導入(TPP協定第18.74条第6項及び第17項(a)(ⅱ)、改正著作権法第114条)
  • 商標権侵害における法定賠償制度の導入(TPP協定第18.74条第7項、改正商標法第38条)
  • 著作権侵害の非親告罪化(限定あり)(TPP協定第18.77条第6項(g)、改正著作権法第123条)

ということになるだろう。

 アメリカが最も強くごり押ししたところで反発が強かったのだろう、最もクリティカルな部分である著作権と特許の保護期間延長とDRM規制の強化の部分こそ凍結されているものの、他の細かな部分については11カ国の交渉でも凍結されなかったと見える。私はTPP協定は保護期間延長だけの問題ではないと考えているし、このような11カ国での合意により今後非凍結項目に対応する法改正項目の施行の圧力が強まることは必死な上、合わせて保護期間延長などの部分まで含めて施行しようとする動きも蠢いて来るのではないかと懸念する。閣僚レベルで合意が発表されたものの、首脳レベルではカナダが反対しているとの報道もあり、今後の行方はなお不透明だが、11カ国でこのような合意が発表されたこと自体極めて残念なことと私は思っている。

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