2017年12月10日 (日)

第385回:経産省・不正競争防止小委員会の中間報告案(不競法による限定公開データ保護の導入及びDRM規制強化を含む)に対する意見募集(12月25日〆切)への提出パブコメ

 各省庁で今年度の法改正の検討が進められているが、その中の1つとして経産省の産業構造審議会・知的財産分科会・不正競争防止小委員会の中間報告案(pdf)が12月24日〆切でパブコメにかかっている。(電子政府のHP参照。)

 この小委員会の4月版の中間とりまとめ案については第377回でも取り上げているが、やはり現行法で守られている営業秘密を超えてデータそのものを守ろうとしている点とDRM規制の強化をしようとしている点で極めて大きな問題がある。

 内容はいつにも増してレベルが低く書かれていることは全て法改正のための法改正としか思えないが、この中間報告案に対して私が出したパブコメをここに載せておく。

 なお、私の提出したパブコメでは触れていないが、この中間報告案には、政令改正によって分析方法や評価方法に関する営業秘密も不正競争防止法第5条の2の不正に取得した技術上の営業秘密の使用に関する推定規定の対象とすることや、証拠収集手続について特許法の改正がなされる場合に不正競争防止法においても同様の規定を導入するといったことも書かれている。

(以下、提出パブコメ)

(1)限定公開データの保護のための法改正について
・該当箇所
 第2~12ページ「第一章 データ利活用促進に向けた制度について」

・意見内容
 本中間報告案中の、限定公開データの保護のための不正競争防止法改正に反対する。

・理由
 本中間報告案では、一定の要件を満たすデータを不正競争防止法の保護対象とするとしているが、そもそも、既存の営業秘密の保護を超え、日本が独自に定義する過度に広範なデータを不正競争防止法の保護対象とすることに対する法改正ニーズ及び立法事実はない。

 たとえば、本中間報告案の第2ページに契約に基づく信頼を裏切り不正に使用・提供されるおそれがある云々と記載されているが、このようなケースは既存の法制及び契約による対応で十分である。本当に秘密とするべきデータであれば秘密保持契約を結んで開示するべきであり、さらに悪意のある利用については契約違反である上、一般的な不法行為規制による対応もあり得、技術的な管理を破ることについては不正アクセス禁止法による対応があり、詐欺については詐欺罪による対応があり得るのである。データの内容次第だが、多くの場合で著作権法による対応も考えられるであろう。

 第6ページでは、対価を支払って選択的に提供される分析データや素材データが対象になると書かれているが、これらはあくまで対価の対象として得られる公開データなのであるから、技術及び契約による対応で十分であり、契約によって利用範囲を定め、それを超える利用は損害賠償の対象となるといったことを明確にしておけばよいだけのことである。

 すなわち、本中間報告案に書かれていることは法改正のための法改正でしかなく、本中間報告案に記載されている法改正は一切するべきではない。

 私は以上のとおり本中間報告案に書かれた法改正そのものに反対しているのであって、個別の問題点について修正すれば法改正に関する問題が解消されると言うつもりは一切ないが、さらに個別の問題点について以下に指摘する。

(a)保護対象となるデータの要件について
 本中間報告案では、保護対象となるデータの要件について、技術的管理性、限定的な外部提供性及び有用性が要件となるとしているが、このように営業秘密を超えて単に技術的に管理されていれば保護の対象となるとするような要件には明らかに問題がある。

 このように単に技術的に管理された有用なデータが保護の対象となるとすると、あらゆる限定公開データ、すなわち、ネットにおいて、無料有料にかかわらずあらゆる会員制サイトで提供されるコンテンツ・データ、対価の対象として提供されるあらゆるコンテンツ・データが対象となり得る。また、データ取引は企業間(BtoB)の取引のみならず、企業対一般消費者(BtoC)や一般消費者間(CtoC)もあり得ることが注意されなくてはならない。たとえ一般公開データと同一のデータを保護対象外とし、不正競争行為となる類型に制限を加えたとしても、このようなあらゆる限定公開データを不正競争防止法の保護対象とすることはあまりにも広範であり、かえってデータの利活用を阻害する。

(b)不正競争行為の類型について
 本中間報告案では、保護対象となるデータについて、権限のない者による不正アクセスや詐欺等の管理侵害行為による取得行為等、契約者による不正利益又は図利加害目的での第三者提供行為等、転得者による不正行為に係るデータの悪意での使用行為等を不正競争行為の類型として追加するとしているが、このような行為類型の追加に対する根拠はないに等しい。

 不正アクセスや詐欺等については不正アクセス禁止法や詐欺罪等による対応が可能であり、それ以上の不正競争防止法による対応を必要とする根拠はない。契約者による不正利益又は図利加害目的での第三者提供行為等についても契約があるのであるから、契約による対応で十分であり、それ以上の対応を必要とする根拠はない。転得者による不正行為に係るデータの悪意での使用行為等もこのような類型を対象とするべき根拠となる実例は存在しない。

(2)DRM規制の強化につながる法改正について
・該当箇所
 第13~15ページ「第二章 技術的な制限手段による保護について」

・意見内容
 本中間報告案中の、DRM規制の強化につながる技術的制限手段に関する不正競争防止法改正に反対する。

・理由
 本中間報告案において、DRM規制について、技術的制限手段による保護対象に一般的な電子計算機処理用データを追加し、そのための無効化する装置等の提供行為を不正競争行為とするとともに、技術的制限手段の定義でアクティベーション方式によるものが含まれることを明確化し、無効化装置等の提供と同等とみなされる無効化サービス提供行為、不正な無効化符号提供行為を不正競争行為とするとしているが、同様に、このようなDRM規制強化のための立法事実はない。

 DRM規制については、利用者に与える影響も大きく、平成11年導入時の必要最小限の内容に止めるとの整理を守るべきである。コンテンツ以外のデータについてDRMによる保護をかけていることのみでは法律で保護を与えるべき根拠とはならないこと、DRMの無効化助長行為は無効化装置の提供とは異なり慎重な検討が必要であることなど、このような議論は導入当時と何ら変わるものではない。また、なぜか本中間報告案では著作権法について一切言及がないが、DRM規制については、著作権法による規制も考慮した総合的な検討も必須である。

 DRM規制の対象として追加されるデータの例として機器の制御や不具合の解析などのために用いられるデータやゲームのセーブデータがあげられているが、これらのようなデータを不正競争防止法上のDRM規制の対象とするべき根拠はない。たとえば、機器の制御や不具合解析のためのデータの暗号の解読のための行為がなぜ不正競争とされるべきなのか根拠は一切不明であり、このようなことが規制されると、場合によって必要となる機器の解析やリバースエンジニアリングなどが阻害されることにつながるであろう。セーブデータ改変は既に著作権法違反なのであるから、不正競争防止法による対処は不要である。

 また、アクティベーション方式は既に現行法の対象と考えられており、無効化装置等の提供と同等とみなされる行為についても同等とみなされる場合は現行法で対処可能であり、法改正は不要である。

 このような無意味なDRM規制強化の検討は全て白紙に戻し、今ですら不当に強すぎるDRM規制の緩和のための検討を著作権法と合わせ速やかに開始するべきである。

 繰り返しになるが、本中間報告案に書かれていることは全て法改正のための法改正でしかなく、本中間報告案に記載されている一切の法改正に私は反対する。

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